気温もだんだん高くなってきて、すっかり春の陽気になってきています。
コロナ渦もあり家に閉じこもっていた影響もあり、生活習慣病といわれている高血圧症や脂質異常症、糖尿病などの予備軍が増えているような気がします。
内科外来をやっていて感じるのは、
『健診で指摘されていたけど、症状もないし特に病院には行かなかった』
『どこも痛くないし、治療の必要なんていらないんじゃない?』
という考えをもっている人が意外に多いことです。
なぜ健診が必要なんでしょうか? 改善しないとどうなるんでしょう?
このあたりのことを今回は書いてみたいと思います。
① どうして健診が必要なの?
高血圧症や脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病は、軽度の場合は特に症状を感じることはありませんので、その時点で生活に不自由をきたすことはありません。
しかし、この状態が続くと動脈硬化などを引き起こしてしまいます。
【高血圧症】 高血圧が続くと血管が硬く、もろくなる動脈硬化が起こります。その結果、脳出血や脳梗塞、心筋梗塞のリスクが高まります。
【脂質異常症】 LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が増えると、やはり血管が傷つき動脈硬化を起こします。また中性脂肪が高くなると急性膵炎や脂肪肝を起こしやすくなります。
【糖尿病】 糖尿病も初期には症状がなく進行していきます。糖尿病で怖いのは合併症です。目や腎臓、神経に障害が起こり失明や人工透析、足に壊疽(足が腐ってしまうこと)ができて切断となることもあります。もちろん動脈硬化の原因にもなります。
そのため、様々な病気が発症するのを予防したり、病気が進行するのを防いだりして生活の質(Quality of Life)を落とさないようにする必要があります。
未然に対処するために健診を受けて
早期発見・早期治療が必要になります
② 生活習慣病から起こる病気は放置するとどうなるの?
上で挙げた病気について説明してみたいと思います。
- 脳出血:脳の動脈が破れて脳の中に出血し、その血の塊が脳の細胞を圧迫するため頭痛や手足の麻痺、言語障害や意識障害などを起こします。
- 脳梗塞:脳の血管が詰まるため血液が閉ざされ脳に酸素や栄養が行き渡らなくなり、その結果脳の細胞が死んでしまいます。手足や顔のしびれ、動かしにくさ、歩きにくくなったり喋りがおかしくなったりします。治療が遅れると麻痺や言語障害が残ってしまいます。
- 心筋梗塞:心臓に酸素と栄養を送る冠動脈が閉塞し、心臓の筋肉が死んでしまう病気です。胸の痛みや呼吸困難、意識障害を起こしたり、治療が遅ければ死亡することもあります。
- 急性膵炎:膵臓に炎症が起こり膵臓の中にある消化酵素によって膵臓自体が自分で自分を消化してしまうことにより起こる病気で、上腹部痛や吐き気、嘔吐などを認めます。重症例では命に危険が及ぶことがあります。アルコールが原因になることが多いですが、中性脂肪が高い人はリスクが高くなります。
- 脂肪肝:肝臓に脂肪がたまった状態で放置すると肝炎へ進行してしまいます。メタボリックシンドロームに合併しやすく、過食と多量飲酒が原因となることが多いです。肝硬変や肝癌につながる場合もあり注意が必要です。
- 糖尿病網膜症:糖尿病が原因で起こる網膜の障害です。網膜は光の情報を脳に送る重要な臓器ですので、ここが障害されると最悪の場合、失明してしまいます。
- 糖尿病腎症:糖尿病が原因で起こる腎臓の障害です。腎臓の機能が悪化すると人工透析が必要となります。透析患者の原因で一番多いのが糖尿病腎症です。
- 糖尿病神経症:血糖が高いことにより神経細胞が傷ついたり動脈硬化によって神経細胞に血液がいかなくなり神経が障害される病気です。下肢の切断が必要になることもあります。
実際に書いてみるとやはり怖いです。もちろん後遺症で生活にも不自由になり、家族にも迷惑をかけることもあると思われます。
特に脳の病気、心臓の病気、急性膵炎などは命にかかわることもあります。
自分のため、面倒を見てもらう可能性のある家族のため、病気を未然に防ぎ、また進行を止めるためにも積極的に健診を受けましょう
新しい絵が完成しました。
今までで一番よく描けていますので待合室に飾る予定です。
近くから見ると残念な感じになってしまいますので、遠くからちらっとみてくださいね。